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降り注ぐ光-2

前回→降り注ぐ光-1

 買い物は思ったよりも早く済み、我輩たちは少々時間を持て余す事になった。
 前回の仕事では山賊や魔物に襲われることも無く、ここのところ戦いをしていない。そこで体を鈍らせないよう出発の前に組み手でもしておくかということで町の外れまで出た。
 廻り番の詰所の裏手に丁度良い広さの空き地があった。その中央あたりで向かい合う。魔物と戦う際には格闘士であっても徒手空拳ではなく護拳や鉄爪といった「闘器」を装備するが、今回は訓練なので革の手袋のみである。我々は二人共に格闘術は得手ではないが、怪我を気にせずに本気の戦いの空気を感じることの出来る素手は都合が良い。

 ヴェルナアは踵を地に着けて腰を落とし脇を締めた。身をかわす事を捨てて己れの攻撃を当てることを狙う構えだ。対する我輩は踵を浮かし、すぐに回避に移れる歩法で待ち受ける。
 彼我の距離はおよそ10呎(フルム*1)と言ったところか。互いに隙を窺いながら間合いを削っていく。
 先に動いたのはヴェルナアであった。掛け声と共に土を蹴り、まずは牽制の拳撃を繰り出してくる。我輩は軽く下がってそれをかわすと気合を一つ入れて胸への後ろ蹴りを放つ。だが、これは払われ肩のあたりをかすめるに終わった。
 その蹴り足を下ろす勢いのままに正拳を獅子鼻に叩き込む。ヴェルナアは仰け反ってかわすがこの正拳は囮(フェイント)である。身を起こし戻ってくる顔面にさらに一歩踏み込んだ拳を命中させる。
 踏鞴を踏んだところにさらに拳を打ち込むがその手を掴まれ、がら空きの脇に肘を打ち込まれた。相手の攻撃を予見して絡め捕る、斧使いの得意とする技を見事に格闘に組み込んでいる。これをやられると攻め手は萎縮して大技を出せなくなる。先読みなどそう頻繁に行えるものではないのだが、頭では分かっていても体が言うことを聞かぬのだ。
 好機と見るやヴェルナアは嵩にかかって攻め立ててくる。正拳の一撃、大上段から振り下ろされる手刀の一撃、何れも体重の乗ったいいのを貰ってしまった。
 とどめとばかりに力をこめて放たれた大振りの一薙ぎは、しかし、よろけて倒れかけた我輩の頭上を通り過ぎた。そのまま体を沈めながら旋回し足を刈るとヴェルナアは尻から地に倒れこみ、起き上がるのに苦労をしている。
 その間に呼吸を整えて両腕に力を行き渡らせ血を燃やし己を奮い立たせて放った会心の一突きは、立ち上がり構えを戻しかけたヴェルナアのちょうど中丹田のあたりに命中した。ヴェルナアはよろめいて2、3歩下がると再び倒れ、大の字になる。
 二人とも暫くそのまま動かなかったが
「あー、クソッ!」ヴェルナアが手足をジタバタさせる。まるで駄々っ子である。
 危ういところだが、我輩の勝利であった。ニヤリと笑うと勝者の余裕で手を差し出してやる。ヴェルナアはその手を取ると
「よっ、と」
 そのまま巴投げの要領で我輩を投げ飛ばした。天地の逆転した視界の中で、起き上がったヴェルナアがガッツポオズをしている。この男はどこまで子供なのか。そう思いながら立ち上がったところで足元を見て、血の気が引くのを感じた。
 投げ飛ばされた我輩はたまたまそこにあった若木の上に着地することで然程の衝撃を感じずに済んだが、下敷きとされた若木の方はその半ばから折れてしまっている。そして、その若木の幹には見たこともない文字のような不思議な模様が描かれた紙の札が貼り付けられていた。
 ここティノルカ大森林は昼なお暗いその深さから黒衣の森と呼ばれているが、それとは別にもう一つの名がある。「鎮守の森」である。古くから精霊たちに守られ、その深奥への人の侵入を頑なに拒むことがその所以だ。人間は森の一部を間借りしているに過ぎぬ。
 グリダニアの幻術士たちは精霊と言葉を交わし鎮めることによって人と森との仲立ちとなる。その契約の証が森の結界と呼ばれるものだ。森の何箇所かに結界の力を与えられた樹木があり、それによって強い敵意を持つ侵入者を阻み、森を守っているらしい。そして、その結界の木を傷つけた者は森の精霊の怒りを浴び、森に飲み込まれ帰る事はないという。
 目の前で折られているこの若木はもしや結界の木の一株ではないのか。だが、これは我輩の意思ではなく我輩はヴェルナアによって投げつけられた云わば石礫のような物であって、むしろ被害者と言わざるを得ず、あくまでも犯人はあの大男の方であり、この件に関して我輩に責任は全く無いのであり、すべてヴェルナアが悪いというのは明々白々、精霊も呪うならば我輩ではなく此奴の方を……と、振り向くとヴェルナアの姿は既に無い。よくよく目を凝らせば広場の向こうの建物の陰に駆け込まんとする姿が見える。本当に逃げ足の速い男である。
 とまれ此度の経緯は精霊も御照覧あろう。我輩が己の身を心配する必要はあるまい。ヴェルナアの手によって折られてしまった若木に手を合わせると悠々と歩いてその場を後にした。

 息を切らせる我輩を指差して笑う馬鹿者の脇腹に無言で四本貫手を突き込むと、背を向けて宿へと戻ることにする。
「イテ!わかった、俺が悪かったから待てよ。って、痛ぇからやめろってば」
 この男は自分が何を仕出かしたのか本当に分かっているのか。もしあれが結界の木であれば命に関わることだというのに、平気で笑っていられる神経が理解できぬ。
「ありゃあ違うよ」などと言うが、この男は結界の木を見たことなどあるまい。
「まあ確かにそうだがな。結界の木ってのは札が貼ってあるんじゃなくて光るもんらしいぞ」
 この男の言うことである。どこまで真に受けて良いのか判らぬ。だがあの木を折った本人がこうまで能天気なのであればそれほど心配することも無いのやも知れぬ。思い悩んでも仕方あるまいと、溜息を一つついてこの件に関しては忘れることとした。

 宿に着き、旅支度を終える頃にコモモがやって来た。
「待たせちまったかい?これが届けて欲しい物さ。扱いはあんまり気にしなくても、あちこちぶつけたり踏んづけたりしないようにだけしてくれりゃいいよ」
 取り出したのは木綿糸で括られた長さ20吋(イルム*2)、幅10吋程の布包みである。触るとガサガサと音がするのは中の物が油紙で幾重にも包まれている為であろう。豆殻枕のような手触りでずっしりと重たい。
 預かったそれを背嚢に収めると我輩の方はいつでも出発できる。コモモの方もすぐに発てるようだ。
「嬢ちゃんは俺が送っていこう」ヴェルナアは浮かれた様子である。我輩たちが引き受けてきた仕事は黒衣森やその周りでのものばかりだが、これまでは偶々グリダニアとは縁が無かった。初めて訪れる大都市に期待を膨らませているのであろう。
「オヤ、そいつは有り難いけれど姐さんの方は大丈夫なのかい?」
 この男はついてきてもむしろ邪魔になるだけである。
「そンなら、お言葉に甘えて旦那は一寸お借りしていくよ」
 返さなくても良いので是非とも引き取って頂きたい。
「じゃあ出発するか」言いながらヴェルナアは宿の出口へと歩き出す。
「チョイと待っておくれよ。まさか歩いていくつもりなのかい?」当然、コモモが不審の目を向けた。
 今日中にグリダニアに到着しなければならないのだからテレポを使う予定であろう。
 冒険者はテレポと呼ばれる移送の術を使うことが出来る。術と言っても呪術幻術の類いではない。天晶石(エーテライト)に由来するものだ。
 エーテライトは万物の根源たるエーテルの純粋な大結晶だという。エオルゼアの都市国家は各地に配備したエーテライト周囲に軍事駐留地を設けて厳重に管理しているが、冒険者は予備役軍人の扱いとなっているためこれを利用することが出来る。
 エーテライトの特筆すべき性質はそれが「記憶する」という点にある。人が触れるとエーテライトはそれを覚える。そしてその者がエーテライトに思いを馳せると、エーテライトはかつての接触を思い出し瞬時にその者の肉体までもを呼び出す。遠隔の地にあっても一度触れたエーテライトならば瞬時にそこへ移動できるのである。またこれには同行者を伴うこともできる。
 だが先程も述べたようにヴェルナアはグリダニアのエーテライトには触れたことがない。うっかりしていたとでも言いたげな顔をしているが、この男のことだ。初めからコモモのテレポに同伴させてもらうつもりでいたに間違いあるまい。
 テレポにはアニマと呼ばれる心の力を消費する。これは決して早いとは言えぬ自然回復を待つしかないので節約の為に他人のテレポに相乗りしたがるものも多い。ヴェルナアはこのタイプの男の最たるものある。コモモにもそれが分かったのであろう。なんとなくげんなりした表情になっている。
 繰り返すが、この男は返却不要である。
 やがて気を取り直したらしいコモモが目を閉じ心を集中させると周囲に光の粒が現れだした。空気が震えるような音と共にそれは二人に集まっていき、その体を覆い尽くすとはじける。二人の姿は既にそこには無い。今頃はグリダニアのエーテライト前に到着していることだろう。
 煩いのがいなくなったところで我輩も目的の根の湖へと旅立つことにした。此度の仕事は楽に済みそうである。

(*1)10呎:地球の長さで約3mにあたる。1フルムは30.48cm。
(*2)20吋:地球の長さで約50cmにあたる。1イルムは2.54cm。

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